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 ある日俺は天啓を得た。  年増、複数同時進行、ブスが駄目だったんなら、今度はロリはどうだろう、と。  書き手として、幅広い層にリーチできますよというアピールだ。  誘拐、とかはさすがにガイドラインにひっかかるだろうから、身寄りのない子を引き取ることにする。  それを大事に大事に、自分好みになるまで育て上げるのだ。  会社の女子社員みたいに、やかましくなく、口答えせず、俺の理想通りにだ。  これは思いのほか楽しい作業だった。  なにしろ出来合いの恋愛シミュレーションゲームなら、製作者の意図、作られた設定の範囲内で遊ばされることになる。  それがどうだ。  自分で書けば完全に自分の好み。完全に自分の思い通りだ。     俺はどんどん執筆にのめりこんでいった。  俺自身、今まで気が付かなかっただけで、どうも「書き続ける」という才能だけはあったらしい。毎日夢中で書き綴った。いくらでも書けた。 「推敲」というものの存在を知ったのは、ロリの章がだいぶたまった頃だった。  一度書いたものを、よりよくするためにじっくり直す。  なんでも、優れた書き手はここの技術が優れているとのことだった。できればプリントアウトしてやると、スマホやPC画面で見るよりいいとのこと。  しかしうちにはプリンターなんてものはない。  どうする?  そうだ、会社。  会社の複合機はリースで、枚数がカウントされている。もちろん私用での利用は禁止だ。    だが俺は知っている。おっさん上司たちが「やっぱり紙のほうが見やすいんだよなあ」と週末のゴルフの詳細などをたまにプリントしていることを。  それとたいして変わらない。いや、この俺の崇高な創作活動のほうが、複合機だって使われる甲斐もあるというものだ。きっとそうだ。
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