復讐の炎(5)発見

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復讐の炎(5)発見

 翌日も神崎令音を探し回ったが、行方は掴めなかった。  ヒロムは、イライラしたりソワソワしたりと不安定気味で、あまねは、しばらくの間希が来るからとヒロムに家に来てもらっているが、丁度良かったと思った。  その望は、待機班に宿題を見て貰ったり、トランプをしたりして面倒を見てもらっている。  普通なら一般人を入れるなんて事はしないが、希は普通の子よりも一般の生活に疎い所があるのと、背後には深見しかないのは確実なのとで、会議室で過ごさせているのだ。  そしてそれと同時に、深見の影響は無いか、魔術士として危険な思想は無いか、そういうチェックも受けていた。将来、6係にというのが、希の予定だ。 「全焼した店舗兼住居にも来た様子はないしなあ」 「親に殺されかけた所だぞ。思い出があっても、悪夢に変わるぜ」  言いながら、あまねとヒロムが戻って来た。  そして一旦報告をし、昼からは念のために取り立て屋の周囲を張ってみようと決めた。  そこでその前にと、希を連れて昼食に出た。 「何が食べたい?」 「クリスマスケーキ」 「……それはご飯じゃないぜ」  ヒロムも、希と一緒で、やっと笑顔が出た。 「美味しかったの」  希は少ししょぼんとした。 「じゃあ、ケーキは帰りに買って帰って家で食べよう」  あまねが言うと、笑顔を輝かせる。美少女の笑顔に、すれ違う通行人が微かに目を引かれた様子を見せた。 「じゃあ、ファミレスに行くか。色々あるし、写真も付いてるし」 「そうだな」  ヒロムの提案で、近くのファミリーレストランへ向かう。  その足が止まった。  前方にガラの悪い男4人と、小学生くらいの男児が向かい合って立っているのが見えたからだ。 「ヒロム!あれ!」 「神崎令音君!」  急ぎ足で近付く先で、令音が逃げ腰になりながらも食って掛かっていた。 「お前らがお父さんとお母さんを殺したんだ!」 「借りた金は返すのは当たり前だろう?」 「あ。まさかお前がビルに火をつけやがったのか?」 「このクソガキが」  令音に掴みかかろうとしたところに割って入る。 「待て!警察だ!」 「事情を訊かせろ!」  しかし、素直にきくわけもない。 「関係ないのはすっこんでろ!」  もめていると、同じ組のやつらが集まって来た。 「どうしたんです、兄貴」 「あ、あのガキって、例の食堂の」 「こいつが火を点けやがったのかも知れねえ!」  抑えているチンピラがそう言うと、彼らは目の色を変えた。 「げっ、まずいぜ!」  ヒロムが慌てた。今の時点で、このチンピラを抑える理由がない。 「令音君!警視庁へ駈け込め!」  あまねが肩越しに言うが、そうするかどうかは怪しいと思っている。  と、希が令音の手を掴んで走り出した。 「あ!何だあのガキは!?」  追いかけて行こうとするのを止めようとするが、人数が多すぎる。  今の時点で魔術を使うのは始末書物であるが、あまねは始末書を覚悟した。 「くっそお!」  魔銃杖を握り、追いかけて行くやつらの足元に氷を張る。 「ぐあっ!?」 「何だと!?」  途端に滑って転ぶ。 「うおおおおお!」  ヒロムも身体強化を使い、まだ立っているやつらを殴り倒し始めた。  そしてチンピラを叩きのめし、あまねとヒロムも、希と令音の後を追い始めた。  令音は混乱のままに希と手をつないで走っていたが、途中でやっと頭が回り始めた。 「君、誰」 「希」 「何で助けてくれたの」 「あまねとヒロムが警視庁に行けって言ったから。  こっち」  希は角を曲がり、2人で防犯の看板の建つ電柱と駐車中の車の間にしゃがみ込んだ。  少しすると、目の前に追いかけて来たチンピラが現れ、 「どこに行きやがった!?」 「お前は向こうを探せ!」 と言いながら、走り抜ける。  それを見送って、希は令音と手をつないだまま立ち上がった。 「行くわよ」 「あ、うん」 「そっちじゃない、こっちよ」  令音が体を向けたのと別の方向に希が足を出す。 「え。そっちは危ないんじゃ」 「大丈夫。こっちに危険はないわ」 「何でそんなの」 「わかるの」  希は、探知と雷の魔術士だ。  走って行くと、あまねとヒロムがいた。 「もう安心――あ」  あまねとヒロムの背後からチンピラが走って来た。  あまねがそいつの足元に水溜まりを作り、希はそれに雷を打ち込んだ。 「あべべべべ!?」  変なダンスを踊ってチンピラは膝をつく。 「2人共無事だったな。良かった。希、よくやったぞ」  あまねが希の頭を撫で、希は胸を張った。 「偉い、偉い。  神崎令音君だね。探してたんだぜ。皆心配してる」  令音はまだ緊張しているようだったが、お腹が派手に鳴り、 「まずはご飯ね。私もお腹が空いたわ」 と希が言ったので、小さく笑いを浮かべた。
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