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2、合流
「あんたが1番心配だったのよ。出てこれてよかった。」
唯は香の肩に手をそっと差し伸べ、車の方へ誘導した。
香は緊張の糸が切れたのか、ウッウッと声を出して泣き始めた。
「ママ、ママ。」
蓮が小さな涙声で言い、ぎゅっと香を握りしめる。
唯は、「蓮君もよく頑張ったね。」と蓮の頭を撫でた。
車の後部座席に香が座るとそこには沙羅がすでに座っていた。
沙羅は、フードを被った香とその香から離れようとしない蓮を見て、涙ぐみ、
「よかった。」
と2人ごと抱きしめた。
「ありがとうありがとう。怖かった怖かったよぉ。」
香は沙羅の温かみに触れ、より一層涙を流した。
「うんうん。大丈夫。もう大丈夫だからね。」
沙羅はにっこりとほほ笑みながら泣いた。
「追いかけてくるかもしれないからもう車出すよ。」
唯は、運転席から振り返り、沙羅と香に言った。
(これからが本当の戦いなのだ。泣いている暇はない。)
唯からは先ほどの優しい表情が消え、鋭い眼差しでまっすぐ前を向いて車を走らせ始めた。
(私たちは、ようやく動き出したのだ。動き出さなければ何も変わらない。思えば3カ月前、SNSであの書き込みを見なければ3人が集まることもなかった。この出会いはきっと私たちに与えられたチャンスなんだ。)
唯はそう思いながら深夜の高速道路に入っていった。
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