◆出会い◆

7/8

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
「やあ、すっかりみんなと打ち解けてるね」 イヴの隣の席に無理やり入り込み、ハヤトの腕が回っているイヴにグラスを差し出すことで、ぼくはイヴの体をこちらに向かせた。 「カナタ! はい、皆優しくて楽しい人たちですね。いい職場に来られたと感謝してるところです」 イヴは差し出されたグラスに自分のグラスを小さく当てて音を鳴らしながら、眩しい笑顔で答える。 「そう言ってもらえて良かった。ここの料理はどう? 口に合う?」 イヴの前に食べかけのピザを見つけ、ぼくが問うと、イヴもぼくの視線を追って 「はい。とても美味しくて、つい食べ過ぎちゃいます。明日体重計に乗るのが怖いな」 と恥ずかしそうに笑った。 そこにハヤトがテーブルに身を乗り出してぼくにグラスを差し出してきた。 「よお、カナタ。おまえのとこ、本当いい部下が入ったなあ。頭も切れるし、おまけに眉目秀麗ときてる。羨ましい限りだぜ」 ハヤトのグラスに自分のグラスを当てて小さく音を鳴らしながら、ぼくはさりげなくイヴの肩に腕を回し、それまで掛かっていたハヤトの腕を外した。そのままイヴの体をこちらに引き寄せる。 「ああ、最高の仲間が増えたよ。イヴのおかげでいい刺激をもらって、みんなやる気も今まで以上に出てきてるしな」 ハヤトが面白くなさそうに眉を上げたのに気付くのは、付き合いの長いぼくくらいだろう。すぐにニカッと白い歯を見せて大げさに笑ってみせると、ハヤトはイヴの肩に腕を回せなくなったかわりに、ぼくの方に身を乗り出すように見せかけながら、グッと体をイヴに寄せた。 「こんないいオトコが上司なら、イヴもやりがいがあるだろ? あ、それとも美人の女上司が良かったか?」 「あはは。どちらも目の保養になっていいですね」 相槌を打つイヴの肩を抱いたまま、腰を浮かせてハヤトの手からグラスを奪う。 「おまえ酔い過ぎ」 「あ、何すんだよ。そんな酔ってないって。返せよ」 ハヤトが笑顔を崩さないまま手を伸ばしてくる。その手を避けてハヤトから奪ったグラスを飲み干すと、イヴに視線を移して 「イヴも少し飲みすぎだな。ちょっと外出るか」 と、少々強引にイヴを店の外へと連れだした。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加