夢の庭へようこそ

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夢の庭へようこそ

「ようこそ、夢の庭へ。当店ではお客様の見たい夢をお見せいたします。お代は夢の長さ没入感により変動いたします。それと当店ではワタクシが欲しい物を下さった方は永久に当店を無料でご利用いただけます。ぜひチャレンジしてみて下さい。欲しい物は変わる事がないのでご安心下さいませ。ではごゆるりと」  店に入ると黒いローブに身を包んだ人がそう言い出迎えた。  離 繋(はなれ つなぐ)は薄暗い店内を見渡してから出迎えた人に視線を向ける。  黒いローブに身を包んだ人は出入り口すぐのカウンターへ行き紙を取り出す。  取り出した紙を持ち繋をカウンター横のソファーテーブルへと誘導し説明する。 「ではまずこちらの紙に貴方の氏名、見たい夢の内容を出来る限り具体的に。それから夢の長さと没入感度合いを五段階のいずれかに丸をして下さい。五が一番長く没入感が高く、見たり聞いたり触ったものに対しリアリティはありますが、起きた時に疲れを感じますので予めご了承ください」  紙と万年筆を繋に渡すとローブの人はカウンターに戻った。  長さとはどのぐらいまでなのかと聞くと最高で二十四時間と回答が返ってきた。それを聞き確かに二十四時間も眠り続けたら寝すぎで疲れそうだと思った。 繋が見たい夢は初恋の人と今の年齢の状態で付き合うと言う内容だった。  記入を終えた紙をカウンターにいるローブの人に渡すと奥の個室へと案内される。 個室は真横まで倒せるソファが置いてあり脳がリラックスするような匂いが漂っていた。  ソファに身体を預ける。 「それでは離繋様。良い夢を」  ローブの人が個室の扉を閉めるとカチッと鍵のかかる音がしたあと、何も見えなくなるほど真っ暗になった。  3時間程経った頃、繋はぼんやりと目が覚めた。  指定した通りの夢を見れ満足だが、どうもリアリティがあったからか昨日の出来事のように感じていた。 「いかがでしたかお客様様」  声と共に明かりが付きローブの人が開いたドアの向こう側に両手をお腹の前で合わせ立っている。 「凄く良い夢を見れました。それに私……、夢ってあんま覚えてられないんですけど、手を繋いだ感触とかハッキリ覚えていて……」  つらつらと感想を言う。  料金も三時間で没入感が五で千円と高くないため、また見たい夢がある時は通おうかなと考える。  店を出て行くときに気になった事を質問した。 「そう言えば……、欲しい物のヒントとかってもらえないんですか?」  そう聞くとローブの人は少し遠くを見た後ニコッと笑顔を作り言う。 「そうですね。大体の人が持ち合わせているものとでも言っておきましょう」  そして両手をお腹の前で組みおじぎをする。 「またのご来店、お待ちしております」
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