伝書鳩

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伝書鳩

 僕は電車から見る景色が好きだ。窓から見える町、自然、眺めているだけでもいろんな事を考えられる。携帯を見ながら歩いてる人、ヘッドフォンをしながら自転車に乗ってる人。何かの動物に見えなくもない雲。  一番前の車両の端っこに座る。換気のためか窓の上のほうが少し空いていた。  流れるアナウンス、降りる人乗る人。その光景が僕に時折あの世を連想させる。電車で運ばれる人達、この駅で降りる人は天国へ、この駅で降りる人は地獄へ、この駅で降りる人は生まれ変わりに。  そんな考えにふけっていると一匹の鳩が窓の隙間から入ってきた。  驚いた何人かが車両を移動。僕と同じく気にしない人も多くいる。携帯のシャッター音に驚いたのかガラスという物体に混乱しているのか、バサバサと音を立て車両の中を羽ばたく。その近くにいた人は席を立ち違う車両へと移動した。  鳩が窓へ向かって羽ばたいているのを見て入ってきたときのように窓の隙間を通ればいいのにと思い眺めていると、僕の方へ近寄りじっと見てきた。  一駅二駅と鳩は電車に揺られながら外を眺めている。しばらくすると鳩は急に乗客に目掛け飛び回った。まるでこの車両を占拠するかのように。  僕の方にも向かってくる。先ほどとは違い攻撃性を感じ怖くなり車両を移動した。乗客がいなくなった車両から鳩はこちらを見る。  トンネルを東リ過ぎた辺りでごごごと大きな音が聞こえた次の瞬間ーー。  誰もいなくなった車両ピンポイントに大岩が激突した。  あまりに突然の出来事に乗客はざわめき驚きの声を上げる。  僕は思う。あの鳩は乗っていた人達に危機を伝えに来たのではないか。だから追い出すように人間に向かって来たのではないか。
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