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「ははは。今日はいつもより元気ですね」
無敵とはまさにこのことだろう。
優しい笑顔、優しい口調、嫌いになる人間はいないと断言できる。
匠も嫌っているわけではない。
どちらかというと周りの人の中で1番心を開ける存在である。
ただし開けるの度合いが小さいだけだ。
「そうですか。いつも通りですけど」
「なーに、それだけ話してくれるのであれば上々ですよ」
匠の愛想のない話し方にもきちんと答えている。
「あっ、そうです。今年度はすみません」
「いえ、俺もそろそろ生徒との交流を増やさないといけないですから」
匠は源藏と目線を合わせないように横を向きながら言った。
「そうですか。素晴らしい心がけです」
源藏は頷いた。
「ですが無理は禁物ですよ。何かあればすぐに頼ってください。ここにいるのはあなたの仲間ですから」
というと匠の横を通って行ってしまった。
横を通る途中なぜか腰をたたかれたのは源藏なりのスキンシップだろうと匠は思った。
(仲間か・・・・・・)
入学式は淡々と進められた。
もとよりこの学校は意外と自由なので入学式もそれほど堅くなりすぎずないような構成になっている。
山の丘高校の自由の象徴といえば理事長の潮 源藏である。
まず理事長がいつも学校をうろついているのが珍しい上にたまに学食で昼食を食べている。
今日の入学式の挨拶も一見するとふざけているような挨拶だった。がよく聞くと、さすが理事長というべき内容だった。
式が終わりにさしかかり担任紹介が始まった。
担任、副担任は新入生の前に並んだ。
この学校は1学年240人おり、1クラス40人の6クラス制である。
そのうち1、2、3組が普通科コース、4、5組が特別進学コース、6組がスーパー特別進学コースになっている。
「では次に1年2組の担任、副担任の紹介を行います」
司会の声がスピーカーから聞こえる。
「担任、松雪 匠。科目は化学を担当します」
司会の紹介とともに匠は1歩前に出て礼をした。
新入生、保護者からは拍手が送られている。
源藏が朝に言っていたことはこのことだ。
匠はまだ(ほとんど)心を閉ざしたままだ。
なので今までは担任や部活の顧問はやっていなかった。
しかし今年度は教師が多く退職してしまい、補充が間に合わなかったため匠が2組の担任をすることになった。
(担任・・・・・・)
そんなことを考えながら匠は他の先生の紹介をぼんやりと聞いていた。
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