クラス

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 匠が教室に入るとすでに席は埋まっていた。  残るは来夢だけだったのだろう。その来夢も今着席した。 「よし、ではホームルームを始める」  匠は依然やる気のなさそうな声で言った。 「とりあえず俺の自己紹介だ」  と言うと匠は黒板に自分の名前を書き始めた。 「俺の名前は松雪 匠。担任。よろしく」  それだけ言うと匠は礼をした。  クラスからまばらな拍手が起こっていたが次第にクラス全体の拍手になった。 「副担任の先生は後から来る。とりあえず配りものをする」  そう言うと匠は何枚かのプリントを配った。 「プリントを読んでおくように」  とだけ伝えると匠は教室から出て行った。  その様子をほとんどの生徒が(いぶか)しげに見ていた。  「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」  教室を出た匠は職員室へと直行した。  職員室に入るとすぐに自分の椅子に座り、頭を抱えてうずくまった。  途中声をかけようとしていた生徒もいたが声をかけられないように早歩きをしたため声をかけられずにすんだ。  しかしこの息切れは早歩きのせいではない。  匠は胸の奥底が苦しくなるのを感じていた。  (俺にできるのか・・・・・・)  心の中でつぶやく。  (担任・・・・・・もしかしたらまた・・・・・・)  そう思うと急に吐き気がしてきた。  なんとかその吐き気を抑える。  (落ち着け。落ち着け)  肩で息をしながら自分に言い聞かせる。   「松雪先生、大丈夫ですか?」  不意に上から女性の声がしてきた。  匠が顔を上げるとそこには心配そうな顔をした若い女性の教師が立っていた。 「・・・・・・双葉(ふたば)先生、すみません、何でもないです・・・・・・」  そう言うと匠はゆっくりと立ち上がった。  双葉 紗椰(さや)。1年2組の副担任だ。  去年入ってきた、今年2年目の新人教師。  特に匠との面識はないが高校の先生内ではすでに「ドジっ娘」キャラで定着しているようだ。
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