クラス

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 その後、匠と紗椰は教室に戻った。 「私の名前は朝比奈 来夢です。スダチでもレモンでもなくライムです」  教室から明るい声と笑い声が聞こえてきた。  どうやらクラスのメンバーが自己紹介をしていた。  来夢の自己紹介はやはりこれがテッパンのようだ。  その笑い声も匠と紗椰が教室に入ると徐々に収まった。  匠は教室の隅に行き、紗椰が教壇に立った。  紗椰は自分の名前を黒板に書いている。 「えーと、このクラスの副担任になりました、双葉 紗椰です。趣味は読書と買い物。おすすめの本があれば是非教えてください。担当科目は数学です。まだ新任なので皆さんに迷惑をかけるかもしれませんが一緒に歩いて行けたらいいなと思います。1年間よろしくお願いします」  紗椰は頭を下げた。  とほぼ同時にクラス中から大きな拍手が起こった。  匠の時とは大違いだ。  まぁ、自己紹介の丁寧さが全く異なる上に、まだ大学を出て2年目。初々しさの残る姿が生徒にとっては親しみやすいのだろう。  (俺もこんな時期が・・・・・・)  匠は紗椰の姿を見ながら昔を思い出していた。  その反動からかまた胸が苦しくなっていしまった。 「それでは、先ほど配ったプリントを出してください」  教壇には紗椰が残ったままだが、副担任のはずの紗椰が指示を出し始めた。  これは何も紗椰が一人歩きしているのではなく匠が教室に来るまでの間の廊下で紗椰の勉強というで頼んだのだ。 「プリントに書いてあると思いますが早速2週間後林間学校に行きます」  紗椰の言葉にクラスがザワッとする。 「この機会に友達をたくさん作ってくださいね」  するとクラス中の顔が「楽しみ」と言いたげな顔になった。 「それから・・・・・・」  紗椰の説明はその後も続いた。  その間、匠は窓に寄りかかって何を見るでも、何を考えるでもなくただ目を瞑って下を向いていた。
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