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孝明がその様子を横目で見ていてると
「さて、本題に入りましょうか」
執事姿の男は一度、スーツの襟を正すように両手で胸の前の襟を引っ張るとそう呟いた。
「本題?」
お茶を飲んで2人の様子を恐る恐る眺めていた孝明が呟くと
「はい、まずは自己紹介を致しましょうか。私の名前は片桐。こちらのお方は、繭花様です」
と、自己紹介を始めた。
孝明が(今更、自己紹介?)と思いながら
「で?」
と返すと、片桐と名乗った男は顔色も変えずに
「私達は死神です。しかも繭花様は、死神一族の長の血を引き継ぐお方。本来ならば、あなたのような人間がお目に掛かれるようなお方ではないのです。感謝して欲しいですね」
と言い出した。
孝明は呆れた顔をして
「はぁ? 何を言い出すのかと思ったら……」
そう呟くと、正座していた足を崩した。
そんな孝明の様子を横目で見ると、片桐が顔色も変えずに
「信じていただけないのは当然です」
と返すと
「当たり前だ! 死神と聞いて『はい、そうですか』って答えるヤツが居るなら、会ってみたいね!」
そう言って孝明が皮肉な笑みを浮かべた。
そんな孝明を見て、片桐は小さく微笑んだ。
「かしこまりました。そう致しましたら、証拠をお見せ致しましょう」
「証拠?」
「はい。では、失礼致します」
片桐は明らかに信用していない孝明に微笑むと、指を鳴らした。
すると孝明は一瞬にして意識を失い、その場に倒れた。
繭花はその様子を黙って見つめ、飲んでいた紅茶のカップをソーサーに音を立てて置いた。
『カシャン』とカップとソーサーが当たる音が鳴ると、孝明が目を覚ました。
「うわ~! 今のは何だったんだ! 綺麗なお花畑の中に立っていて、死んだ婆ちゃんが川の向こうで手を振っていたぞ!」
飛び起きた孝明がそう叫ぶと
「信じていただけましたか?」
片桐は小さく微笑んだ。
孝明は夢うつつのまま片桐の顔を見ると、口許を押さえて
「……と言う事は、今のは三途の川? じゃあ、俺は死んだのか?」
ゆっくりと片桐の顔を見上げた。
すると片桐は口元から笑みを無くし、真顔で
「いえ、まだです。」
とだけ答えた。
「まだ?」
「ええ、まだです」
孝明は片桐の言葉に戸惑いながら
「……と言う事は、今は生きてるけどじきに死ぬって事か?」
そう呟いて黙り込んでしまう。
そんな孝明の様子を見て
「それは……」
口を開いた片桐に
「良い! 分かったから、最後まで言うな!」
そう言うと、しばらく考え込んでしまう。
片桐は孝明のその様子を見て繭花の方を見ると、繭花は涼しい顔をしてお茶のお替りを催促して来た。
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