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普通の人ならば、ここまで言えば分かってくれると思っていた。
しかし、ななこは全くめげずに
「はい、勝手にします!」
と手を上げて答えると、『ね~』と片桐達に同意を求めていた。
そんな「ななこ」を横目で見ると、孝明は頭を抱えて溜め息を吐き
「全く……。今日は、とんだ厄日だな。」
そう呟いた。
そんな孝明の後ろ姿を見ながら、ななこは悲しそうな泣き出しそうな笑顔を浮かべて
「私さ……、信じてた恋人に振られちゃったんだよね。だから、もう何だって良いんだ。それに、あいつが少しでも心配してくれるんなら『ざま~みろ』って感じ。」
と言うと、「えへへ」って無理に笑顔を浮かべている。
その姿に、孝明は再び『あの日の彼女』の顔を思い出す。
(あの日のアイツも……悲しそうな、泣き出しそうな笑顔を浮かべていたっけ……)
ぼんやりと思い出している孝明に、ななこは遠くに視線を向けると
「男の人ってさ……簡単に長い年月を、一瞬で削除できちゃうんだね」
ポツリと言われた言葉に、孝明は一瞬、言葉を失う。
「それは……」
孝明が言い淀むと
「女にとって、信じていた大切な人から振られるって、どれだけショックだかわかる? 本当に好きな相手なら、尚更なんだよ!」
「……」
ななこの悲痛な叫びに、孝明は完全に言葉を失った。その言葉はまるで、あの日の彼女に言われている気持ちになったからだ。
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