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エピローグ~わたしから、あなたへ~
…… ねぇ、あなたは、どんな子なのかな。
目はどんな形をしてる?
鼻は?
口を開けて、あくびをしたりするのかな?
小さな手。小さな足。
大きな声で、泣くのかな?
ねえ、ごめんね。
普通のお母さんには、たぶん私はなれないんだよ。私からあなたへは、愛をあげる、だなんて絶対に、言えないもの。
それは、とてもこわいことだから。
ただ、あなたが私を必要としなくなる時までは、ちゃんとそばに、いるからね。
あなたが本当に好きなものと本当に嫌いなものを知って、あなたの喜びを喜び、あなたの悲しみを悲しめるように。
あなたに、私の空白を押し付けることがないように。
そういうお母さんに、私はなりたいの。
ピンポーン。
玄関のインターフォンが鳴って、記憶の中よりも少しだけ小柄になった母が、カメラに映る。
…… その手に提げている紙袋のロゴは、私が大好きなケーキ屋さんのものだった。
覚えていて、くれた。
それだけで、じゅうぶん。
そう思おうと決めて、息を整え、扉を開ける。
-- 願わくば、ここからまた、やり直せますように。
(終)
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