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遺書
お母さん。
これが、私からあなたへ贈る最後の手紙です。
昔、あなたへ贈った最初の手紙には 『おかあさん、だいすき』 と書きましたね。次は、 『お母さん、いつもありがとう』 でした。
あなたは今でも、アルバムに貼って大切に持ってくれている。そうでしょう?
けれども、この前に机の上に置いておいた 『この家に居るのは堪えられない。探さないでください』 という手紙は、ビリビリに破いてゴミ箱に捨てていましたね。
あなたはすぐに警察に電話して、必死に探してくれて、連れ戻された私を叩いて泣いてくれました。
けれども、手紙の内容は理解してくれなかった。ま、予測通りではありますが。
もし、あなたが、 『なぜ家に居るのが堪えられないのか』 を聞いてくれたなら、それは、私とあなたの最後の和解のチャンスだったかもしれないのに…… これでも私は、あなたと和解したいと望んでいたのですよ。
もっともあなたには、私との間に諍いがあったという認識すら、ないかもしれませんが。
諍い…… 昔、私があなたのことを大好きだと思っていた頃から、あなたはその種をまいていました。
きっと、気づかなかったのでしょうね。
もちろん、悪意だった、なんて思っていませんとも。
ただ、あなたは一生懸命に 『理想的な女の子』 を育てていただけなんですから。
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