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一人残ったのは、同じ。振り返った。
「馬鹿なのか、禎也は」
「は!?」
歯に衣着せぬ、直截な言い回しに遠慮はなく、厳しく聞こえる。さらに独自の思考回路があり、禎也はいつも付いていけない。
「いきなりひどくね!?」
「ない。穂乃美には彼氏がいる」
「嘘だろ」
「学校で有名なカップルだ」
ずうん、と地の底まで沈む気分に襲われた。道理でクラスメイトの隆平が妙にニヤついていたわけだ。意気揚々と報告をしたのに、反応がおかしかったところで問い詰めるべきだった。
すました一色が、なんだか恨めしい。
一色の立ち位置は、特殊だ。一学年、一クラス、さらに男女で別れ、数人のグループがある。誰もが何となくどこかに収まっている中で、どこにも属していなかった。
制服のない高校で、ユニセックスな私服をシンプルに着こなす一色は、男子グループの野球談議にも、女子グループのプチプラコスメにも、食いついて盛り上がる。浮くこともなく、ごく普通に誰からも名前を呼ばれていた。
禎也とは、にわかラグビーファン同士として繋がっていた。禎也の自宅、三川家で、家族と共に新品に買い替えたテレビの前で盛り上がった。とはいえ、研究熱心な一色から、色々と教わることが多かった。
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