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第1話 それは当たり前の日常
「続いては風神情報です――」
朝の支度をしている最中に僕はアナウンサーの声を聞いてテレビに顔を向けた。
「昨日から日本に接近中の風神は今も進路を変えることなく真っ直ぐに日本列島に接近しています――このままの速度で進んだ場合、今日の夕方から夜の間には上陸する見通しで――」
そこまで聞くとテレビを切った僕は足早に家を出る。玄関の前で靴紐を固く結んでから鍵をかけた。
2年前にどこからともなく現れた謎の生命体、風神は暴風を起こしながら世界中を飛び回る化け物だ。自身を中心に超大型の竜巻を常に発生させ、その内部ではあらゆる方向に暴風を駆け巡らせている。そんな大災害を引き連れて世界中を気まぐれに飛び回る。
その規模はちょうど台風と同じようなものだった。暴風域も基本的な進行速度も大きく発達した台風に近似している。台風と違うところは進行方向が風神の気分次第だということと、風速がその辺の台風よりもずっと強くて及ぼす被害が甚大だということ。
年老いた老人のようでありながらも筋骨隆々。恰好は古い絵のように腰巻だけを身に着け、風を起こす袋のような物を持っている。鬼のような形相に生えた1本の
角……。
そんな風神は今日も僕の住む町にやってくるかもしれない。
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