猫の王様BD記念SSS ~九条くんと桜の約束~

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 さっきから、恋人の様子がおかしい。  そわそわしているというか、……そわそわしているというか。  多分、他の人なら指摘してもわからないような、本当に些細な変化だ。俺の気のせいかと思ったけれど、そんなことはない。  俺に向ける目の開き具合とか、時折見せてくれる僅かな微笑みの角度とか、瞬きするときの微妙な間とか。  俺以外で唯一、広瀬さんと無言の会話ができてしまう中井ですら、きっと気づかないだろう。  というか、気づかないでほしい。俺だって、ここまで広瀬さんのことがわかるようになったのは、つい最近なんだから。  目の前に広がる満開の桜並木を眺めながら、俺は隣を歩く広瀬さんをちらりと見やった。最初は人混みのせいかと思ったが、この辺りまで来るとむしろ人影はまばらだ。駅からも遠いし、出店や催し物などの声すら聞こえない。  静かに、けれど華やかに咲き誇る桜を振り仰ぐと、その向こうに抜けるような青い空が見えた。
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