僕はママ

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僕はママ

「それじゃ、始めますね。まず“きっかけ“から」 向かいに座った女性は、ボイスレコーダーの録音ボタンを押して机の上に置くと、僕にそう言った。 女性スポーツマンぽい中性的な顔立ち。ネイビーのパンツスタイルのスーツ。 年齢は20代後半かな? もっとオタクっぽい人が来るのかと思ってた。 「きっかけ?そうですね、“ママ”になったきっかけは…」 午前11時、小さめのスタバの店内はあまり人がいない。 ここは元々コンビニだった。去年までサラリーマンだった僕は、よくここで昼食を調達していた。 「ああ、ごめんなさい。まず絵を描くのが好きになったきっかけを教えて下さい」 僕はオタク御用達の雑誌、アキバエンタメの記者にインタビューを受ける事になった。 “ママ”になったからね。 え?違うよ、母親って意味じゃない。 V-tuberの生みの親って事。 僕はバーチャルユーチューバーの事務所でキャラクターデザイナーとして働いてるんだ。 この業界ではそれをママって呼ぶ。 「絵を描く事が好きになったきっかけ、ですか」 「ええ」 思い浮かぶのは1人のJKの顔。 「ケンカが強いギャル、ですね」 「え?」 女性記者は何度か素早く瞬きしていた。 そう、僕はケンカが強いギャルのお陰でママになれた。 言ってる意味わかる?
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