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大きな身体を支える足は鉄のようで、自律神経と繋がる箇所が特に硬くなっていた。
薫は講師から習った通り、指を虫の歩みのように少しずつ移動させていった。
そうしている薫の指先は段々と白波瀬の肌に馴染み、不思議と温かくなって行く。
「ある日──、
ヴェルソーは泉の傍に咲く一輪の花に恋をしました。
そよ風に揺れ、水の反射を受けてきらきらと白く輝く様はとても愛らしく、匂いも格別だったのです。
蜜を吸おうと蝶に変身したヴェルソーが花に止まりかけた時、声が聞こえました。
『私は泉の神に愛でられた花なのです。
この蜜は泉の神に捧げるもの。
どうか奪わないで下さい』と」
もう一方の足を解し出してまもなく、薫は、
カクン、、、と白波瀬の足にあった力が抜けたのを感じた。
が、尚も
「── けれどもヴェルソーは可憐な花は自分の為にこそ咲いたのだと信じて疑いません。
訴える声には耳を貸さず、大きな羽をたたんで小さな花の上に止まってしまったのです」
一区切りつくまで術を施した薫が目をやると、白波瀬は前をはだけさせたまま静かに胸を上下させていた。
「白波瀬、、、さん?」
まさかとは思ったが、
「白波瀬さん、終わりましたよ」
ベッドに横たわる美しいアルファは、
いつの間にか深い眠りに落ちてしまったようだ。
「どうしよう、、、。
眠らせるつもりはなかったんだけど」
疲労が過ぎて、『セックスしなければ眠れない』と豪語していた男が両足を解しただけで眠ってしまった。
「しかもこんなに早く」
薫は可笑しくなり、思わずクスリと笑った。
十数分前までは興奮を残していた猛々しいペニスも、大きさは保ったまま今は寝に落ちた白波瀬そのものに鼠径部に向かって傾き、無防備に横たわっている。
けれど、、、
「なんて綺麗なアルファなんだろう」
薫は暫し微笑んだ後、力を解いてもなお隆起する筋肉に見惚れてしまった。
大きな骨格が象る身体は何ものにも動じない大木のようで、自分を軽々と持ち上げた腕は鋼の束で造られたような強靭な枝に思える。
薫は無意識に伸ばして触ろうとした自らの手に驚き、慌てて引いた。
『アルファに触りたいと思うなんて』
クローゼットから予備の毛布を取り出し、萎えても尚存在感のあるペニスから顔を背け、そっと掛けて離れる。
ドアのところまで行って振り返り、仄かに残る灯りをどうしようか迷ったが、カーテンは開けたままだったから朝まで眠っても差し支えないだろうと、
カチッ、、、
フットライトだけを残して部屋を出た。
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