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翌朝、
「良くお休みになられたようですねぇ。
リフレクソロジー(メイト)の力というのは大したものです」
スッキリとした顔の白波瀬に、含ませた物言いをする湯浅も上機嫌だった。
二人は早朝からの打ち合わせを終え、白波瀬の執務室からダイニングに向かっている途中で、昨夜の薫を思い出した白波瀬は、ふと口元を緩めて言った。
「薫は半裸の私に怯むどころか説教までしてきたぞ。
拒むのをベッドに倒してリフレクソロジーだの物語だの、、、
一体何があったんだ?」
湯浅は素知らぬ振りをして笑った。
「社長の性格がいくらかわかってきたのでしょう」
「は、、、どんな性格だと言いたい?」
「それはご本人に訊いてみませんと」
ダイニングルームへの扉を開けて、白波瀬を促した。
フロアを見回した白波瀬は、
「薫はどこだ」
振り返って湯浅に訊き、一人分の食事が用意されているテーブルへ視線を移し、眉をひそめた。
「今朝から私に代わりまして、社長の上着にブラシをかけて下さるそうで、今は二階にいらっしゃいます」
「薫の食事はどうした?」
「それが、、、『今後は皆さんと一緒に摂る』と仰って」
湯浅は食事を運んできた給仕達を眺めて言った。
「私と食事を摂るのが嫌なのか?」
「いえ、恐らくは『自分もこの家の従業員だから』と遠慮なさっているのでは」
「何を言う、薫は従業員では、、、」
その一言に給仕たちは興味津々となり、湯浅はニヤニヤしながら口の端を上げた。
「ありませんよねぇ」
「とにかく、すぐに薫を呼べ。
あいつが何と言おうと食事は私と一緒だ」
「そろそろ降りてこられると思いますが」
「支度など後でいい。今すぐ呼ぶんだ」
少しくらい待てないものかと湯浅は呆れたが、自身の支度を『他の者に任せろ』と言わないのは喜ばしいことである。
言っている間に薫が入って来て、
『おはようございます』
と頭を下げた。
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