青い蝶の物語

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「、、、夕べは遅くまで悪かったな」 「いえ」 「私が言うのもなんだが、よく眠れたか?」 「はい」 「、、、、」 「、、、、」 「、、、残さず食べるんだぞ。 お前の為ではなく腹にいる子の為だからな。 親は子どもの手本にもならなければならない」 「あ、はい」 会話のぎこちなさと、 言っている白波瀬自身はサラダプレートにスライスした玉葱を残していることに給仕やハウスメイドらは笑いを噛み締める。 依然タブレットから目を離さず、口だけを挟む白波瀬の前に、湯浅は玉葱が残った小さなプレートを寄せた。 対し、白波瀬は、まるでもうひとつの目で捉えているかのごとく、寄せられたプレートを退け、 「コーヒーを」 少しだけ顔を動かして脇に立つ給仕に言った。 湯浅が薫の耳元で、 『玉葱が苦手なんですよ。子どもみたいでしょう?』 と囁き、 『幼少の頃、ひどく辛いものに当たってから、一切口にできなくなったそうです』 白波瀬が持つ唯一の弱みを薫に(さら)してほくそ笑む。 「言っとくが、私に苦手なものなどない。 今日のは特別変な味がするだけだ」 「召し上がってもないのに、よくおわかりで」 「毎朝毎朝懲りもせず。 お前が出させているのはわかっているんだぞ、湯浅」 「威厳あるアルファが玉葱ごとき克服できずにどうします」 「属性を引き合いにするな」 二人のやり取りを聞いた薫はフォークを手にして自分の前にあるサラダのプレートから玉葱を取って口に運んでみた。 何もおかしいことはない。 薫の味覚からすれば、店売りのものよりはるかに甘く、ドレッシングなどなくても食べられるほどだ。 少し考えてから立ち上がった薫は、白波瀬の側に寄ってプレートに残された玉葱を覗き込んだ。
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