Requiem

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「良い機会だから薫君にも伝えておくけど、アルファってのは自分のテリトリーにいる 『(つがい)対象』への独占欲が強いんだ。 アルファの中でも純粋な血統にあたる社長は尚更。 つまり、、、 パックにいるオメガが単独行動をとることや、他の者と接触するのを好まない。 ちょっと分かりにくいかな、、、」 「パック、ですか?」 「元々僕らの属性が分かれてのは、この世の中が群れ社会で成り立つ為にあるからで、国や企業はアルファが頂点となって構成しているだろ? それはつまり、狼のパック(群れ)と同じなんだよ」 「狼、、、」 「積住建設グループも群れ。 この屋敷で働く者達も群れ。 いずれもリーダーは白波瀬社長だ。 社長にとって薫君は『番』にも成りうる特別な存在。 社長に自覚はないけれど、今となっては他の男が君に触れるだけでも完全アウト。 じゃあ何で異性である僕が君の側にいられるかって言うと、僕はベータで徹底したノンセクシュアルの立場を社長に明示してるから。 実際僕は男女のどちらにも性的興味がない。 狼の群れで例えると、繁殖行為をしないでパックを世話する個体がいるんだけど、それに近いかな。 他のベータ同士がどうなろうと社長は口を挟んだりしないけど、薫君は別。 もう薄々感じてはいるだろうけど、君は白波瀬 正樹(まさき)というアルファの独占下で守られてるオメガなんだよ」 「、、、、」 湯浅は整った髪に指をくぐらせてカリカリと掻いた。 「でも、独占って決して良い言葉ではないよね? 僕は遠回しに守るって言ったけど、白波瀬社長の場合は『支配』に近いから。 だからもし、、、。 そう、もしも薫君がそれを受け入れられないなら今のうちに僕に言ってくれないか?」 湯浅としては薫の気持ちを無視してまで『番』を成立させることはしたくなかった。 以前受けた暴力でのトラウマが克服できたとしても相手は白波瀬である。 桜庭医師は白波瀬の『(しょう)』に薫は耐えうると断言したが、メイトであってもダメなものはダメだろう。 そうであれば諦めるより他ない。
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