Requiem

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─ 国際会議場 ─ ─── 「湯浅秘書長、 今朝から社長に関するネットニュースがアップされていると情報管理部より連絡がありました」 通訳を介し、某国との事前調整をしていた湯浅は部下から耳打ちと同時に差し出された画面を見た。 日刊○○ニュース 【積住建設トップの寝取りと監禁!】 の見出しの後に小さく、 【大物政治家の息子は訴えた。 『私のオメガを返せ!』】 「代表を貶めるような内容ですね。 各メディアからは早速事実確認の取材申し込みが入ってます。 これに乗じたフェイクニュースも出回っていまして、社では顧問弁護士を通じてアカウントの抹消と訴訟の手続きを開始したそうです」 「きたか」 とは思ったが、湯浅は驚きはしなかった。 というのも、この程度の嫌がらせは大企業となると日常的にあり、でっち上げやフェイクニュースも想定のうちであるからだ。 ただ今回は薫が絡んでいる。 それ故の報復となると見過ごせはしない。 薫が白波瀬邸にいることを知っているのは蒼大と仲間の一人だけだが、どちらも嶽部と繋がっていたとは考え難い。 となると、薫を助け、車に乗せた時点で白波瀬の車はナンバーを見られていただろうから、この件に関しては樋口による単独的恐喝の前触れと考えるのが妥当だ。 恐らく嶽部は利用されただけ。 湯浅は顔を動かしてガラスの向こうにいる白波瀬を見た。 主はすでに大統領府相と油田開発事業の本詰めに入っている。 単なる『ゆすり』ではあろうが、薫がかんでる以上、一応白波瀬の耳に入れておこうと湯浅は管理部からの報告を待機状態にしておいた。 同時に、ラップトップの画面上に何気なく流れてきた文字を眺めた湯浅は、 《社長宛にご自宅のセキュリティより、至急連絡 ──》 という一文を見て、 「っ、、、!」 即座に緊急のタグを付けて白波瀬宛に優先メッセージを送った。 手元にあるモニターに目を遣った白波瀬は会話の区切りを待って、すぐにピンマイクで返事を寄越してきた。 『先に病院へ行け』 この一言で全てを承知した湯浅は、急ぎ引き継ぎをして会議場を出た。 セキュリティからはメッセージにて経緯報告がきていたが、湯浅はその中の一文に目を見開いた。 「嶽部が現れただって?」 嶽部と樋口に関しては白波瀬が独自に調査していた。 二人の顔写真も入手し、付き添う者には申し送りをしていたので、デパートで薫に接触しようとした男が嶽部だということは、セキュリティにも運転手にもすぐにわかったようだ。 湯浅は車中から嶽部らの息がかかっていない国警捜査員を探し、連絡を取る段取りに入った。 しかしそうしてる間にも、 聖コントリビュート研究病院の桜庭からは、 『薫君の処置が終わりました。 診断は早期流産です』 との連絡を受ける。 「とうとう、、、」
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