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湯浅が病院に到着する頃、白波瀬から、病院に向かうのが遅くなる旨のメッセージが入った。
「難航してるのか、こんな時に」
しかし今回の商談は国際規模の開発事業であり、積住の命運もかかっている。
湯浅は溜め息とともに、しばらくシートから外の流れる景色を見ていたが、白波瀬と過ごした5年の間に培った勘が、
「まてよ」
ふとあることを予感させた。
胸ポケットからスマートフォンを取り出し、白波瀬の居場所を測定してみる。
─ やっぱり。社長が移動してる、、、
向かう方向的には本社でも自宅でもなく、高級クラブがひしめく繁華街であり、その中には薫が以前働かされていたビルがある。
─ まさかとは思うが
湯浅はビルの所在地を車のナビゲーションに転送しながら運転手に言った。
「一旦病院に行き、すぐにこの建物のある場所へ向かいます。
駐車場には入れず、車回しで待機してて下さい」
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