Requiem

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その頃、 ─── イルミネーション華やかな街の中心、 外気温が低い割に、降る雨は(みぞれ)まじりにもなってはいなかった。 ─── 大通りで停められたタクシーから降り立ったのは白波瀬と、一人の小柄な男。 シャッ、、、 特注のカーボン傘を自ら広げ、比翼仕立てのチェスターコートを纏った白波瀬は、雨の中にも関わらず行き交う人々の注目を浴びた。 続く男は辺りを伺いながら、背を丸めて跳ぶように白波瀬の後をついて行く。 白波瀬はどうにか傘が当たらずに歩ける、というほど狭い幅の裏通りを迷うことなく進み、 あるところまで来ると足を止め、男に向かって頷き目の前の建物を見上げた。 そしてすぐに一見ラウンジと見せかけた地下への階段へ視線を移し傘を閉じる。 腕にある時計を一度確認し、 「行くぞ」 「はい」 二人は灯りもない薄暗い階段を静かに降りて行った。 ───
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