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「これは一体どういうことですっ!!」
肩をいからせ、拳を握って背伸びをする湯浅の背後からは続々と捜査員が入ってくる。
さして驚く風でもなく白波瀬は流し目をやって訊いた。
「病院はどうした」
「その報告は後でしますっ!
先にこの状況を説明して下さい」
「見ての通り嶽部の悪事を晒し、法的社会的制裁を与えたところだ。
ついでに文冬砲でも放って樋口率いる犯罪の巣窟も潰しておこうかと。
動かない国警を動かし我が国の治安を維持するのは、巨額納税法人たる積住の義務でもある」
白波瀬の視線の先では小男が嬉々として写真を撮り続けていた。
「あ!あの人は、、、」
「当社広報部の隠れ便利屋、お前も顔くらいは知ってるだろう」
世間話でもするような軽さに、湯浅は珍しく怒りを顔に表した。
「『だろう』じゃありませんよっ!
セキュリティも同伴させず監禁でもされたらどうするんですかっ」
「相手は私だぞ?
そんなことさせるものか」
澄ました顔の白波瀬は身を振り、出口に向かった。
「こういうことはっ、きちんと戦略を立ててですね、、、」
湯浅は大きな背中を追いかけ やいやいと騒ぐのだが、
「戦略とは自分より力のある者に対して立てるものだ。忙しい私が雑魚相手にこれ以上貴重な時間を割く理由はない」
薄い笑みを浮かべる白波瀬より力のある者はいないことを承知しているだけに、行き場を失った怒りは消沈してしまう。
「万一の事があっても社長の代わりは誰一人いないんですから、後の事をよくよく考え、、、」
「その為にお前がいるんだろう?
持ち前の勘を働かせてマトモな国警を連れてきたじゃないか。
さすがは私の右腕だな。
後はあの男と捜査員に店の一掃を任せればいい。
行くぞ」
「行くぞって、、、」
「病院だ」
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