兄は妹のために自宅をラッピングする

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クリスマスの夜には空飛ぶトナカイに乗ってサンタさんがやってくる。良い子の枕元に、クリスマスツリーの木の下に、プレゼントを置いてくんだ。 じゃあ悪い子には?とパパは言う。 悪い子にはなまはげが来るんだよ。わらぐつ履いて包丁持った鬼の面の怖い恐いなまはげがくるんだよ?もちろんプレゼントは無しだね。 切り分けられたケーキのてっぺんの赤鬼なまはげをてっちゃんは真っ先に食べて、飾りの(包丁)をポイっと捨ててにっかり笑った。 「悪い子はなまはげさまに食べられちゃうんだって。」 ゆきちゃんはぶるっと震えてママに抱きついた。なまはげさまはこのおうちにやって来ておうちのなかを暴れて去っていったこわいこわい神様の鬼だ。 てっちゃんは、なまはげさまが家に侵入出来ないよう庭のイルミネーションと連動する時限式の海兵隊向けSOS手旗模様やベランダから垂らした配線にモールス信号点滅ライトを仕込んだり、ゆらゆら炎のイミテーション暖炉の煙突を塞いだり準備万端だ。 引っ越してきた二月。突然現れた仮面ライダーばりの武器(包丁)を振り回す酒臭くて大声で暴れ回る鬼面にゆきちゃんがギャン泣きしたあげく2週間も寝込んだ(たまたま風邪をひいた)ので、あの鬼面らを駆逐しようと転校先の図書館で調べたらなんと鬼面は神様だった。ほんのちょっとだけ神様と知り合いなてっちゃんは、駆逐はダメだなあ、とぼんやり思って、夏休みにじいちゃんから買ってもらったタブレットで情報を集めて、学校も休んでずっと撃退する対策をしていた。タブレットで繋がった遠くに住む親友(そうちゃん)の協力もあってお小遣いを稼ぎながら材料を揃えられた。 「クリスマスはいのちがけだね。」 にっかり笑ったてっちゃんに、ママに抱きついたままのゆきちゃんはこくこくとうなずいて、ゆきは良い子だもん!と訴えた。 メーリークリースマース!ハッハー!ワールイコハイネガー!(お正月にしれっと各家に彼らがやってくることをてっちゃんはまだ知らない。)
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