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兄は妹のために自宅をラッピングする
お庭のイルミネーションがきらきら。
イミテーション暖炉の揺れるフェイク炎はゆらゆら。
真っ白なファイバークリスマスツリーに下がるブルーとピンクの飾りはぴかぴか。
小学3年生のてっちゃんはツリーの周りを立体に飛び回るドローンにケミカルライトをプログラムしてついでにホログラフィックも重ねる。
ダイニングテーブルのママの作ったブッシュドノエルは、パパが帰ってくる前に砂糖菓子の飾りを乗せたらできあがり。かっこかわいくかざる重大任務は4歳になったゆきちゃんがまかされた。
ゆきちゃんはリボンの編みこまれたてっぺんお団子頭をむむっとかたむけ、ダイニング椅子の上に立ち膝で白いお皿に並んだ飾りと砂糖菓子を吟味する。
ゆきだるま。となかい。もみの木の。リンゴンベル。プレゼントボックス。ひいらぎ。大きなほうちょう。ながぐつ。赤い帽子の白いお髭のおじいちゃん。白いつのとお髭の赤い顔のおじちゃん。
むむっとゆきちゃんは吟味する。
ぜんぶかざるのは、かっこかわいくない。
うんうん悩むゆきちゃんにベランダから庭に垂らしたイルミネーションの時限装置を組み替えたてっちゃんが砂糖飾りの入った白いお皿をのぞきこむ。
「ゆっちゃん、兄ちゃんが手伝う?」
マーブルチョコの筒をかしゃかしゃふるてっちゃんにゆきちゃんは、いやっ、と拒否した。ゆきちゃんは覚えている。いつだったかのママがデコレートしたふわふわ生クリームであじさいのお花みたいにまあるくつんつんしたしろいケーキに、ポンッと筒のふたをあけて、ざらーっとカラフルマーブルチョコをてっちゃんがぶちまけたのを。ついでにママにつのが生えてこわいかおをしたのをおもいだしたゆきちゃんはぶるっと震えた。
「ひとりでやるのっ!」
ふーん、とてっちゃんは筒をかしゃかしゃふって、ポンッとふたをあけ、ざらーっとカラフルなマーブルチョコを砂糖のお人形飾りの入った白い皿に入れて、にっかり笑った。
「兄ちゃんはチョコが好きなん。」
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