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崩れるように倒れたわたしを龍神さまが抱え叫んだ。
何が、起こったの?
振り向くと幼馴染みの孝太の手には血の付いた太刀が握られていた。
ゆっくりと顔を上げた孝太は焦点の合わない目で、太刀の先を見る。
次の瞬間に、孝太の口から黒い靄が吐き出され、その黒い靄は膨らみ続けて巨大な黒蛇になった。
孝太……じゃない?
「邪神っ!? 孝太の体を乗っ取ってたのかっ!?」
「龍神になれず邪神に堕ちた蛇かっ!ゆう!大丈夫かっ!おい、孝太!しっかりしろっ!!」
九尾の狐の吉丸と鬼の雷鬼が庇うように前に立った。
「ゆうっ!!」
わたしを抱えた龍神さまの手が真っ赤に染まって、龍珠がわたしの体から滲み出していく。
龍神さまが命よりも大切にしていた珠が流れてく。
ああ、わたし死ぬのかな。
抱き抱えてくれてる龍神さまの腕が震えてる。それが答えだとわかった。
「絶対に、助けてやる……龍珠が、おまえの体から抜けて……」
龍神さまの震える声。
「黒蛇邪神めっ!」
吉丸が叫び元の九尾の狐の姿に戻り、
毛を逆立てて黒蛇に躍り掛かる。雷鬼は長い爪で蛇の目を切り裂いた。
孝太は蛇が抜け出ると、我に返りわたしに走り寄った。
「俺は、なんてことを!」
「孝太は悪く、ないよ……」
蛇邪神に憑かれただけだもの。
微笑むと口から熱いものが滴り、孝太が息を飲んだ。
「ゆう……?」
龍神さまの震える声に、
わたしは最期に龍神さまの頬にそっとくちびるを寄せた。
人間のわたしには、龍神さまに応えられるのは想いだけ。心だけしかない。
「龍神さま……」
力を失くしてくわたしを龍神さまが震えながら抱き締めてくれた。
静かに目を閉じると、龍珠のぬくもりが龍神さまの手へと戻ってく。
龍珠、お返ししますね、龍神さま───
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