龍神さまの溺愛

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※※※ 「ゆう……?」 心臓を止めたゆうの亡骸を抱え、絶望に打ちひしがれた。 失ったものは魂の片割れ。 ゆうはもう二度とこの手には戻らない。 天を仰いで魂の片割れを腕に抱き上げると龍の姿になって空へと舞い上がる。 『天よ、叫べ!』 咆哮が辺りの空気を震わせた。 青かった空が一瞬にして雨雲に覆われ、雷が地に落ちる。 風が吹き荒れ、雨も雹もすべてを叩く。 あの心優しい娘に神もあやかしも救われていた。 その笑顔に、その小さな手に。 それを一瞬で失った。 バキバキドドーンッ 天の怒りと悲しみが暴れる黒蛇を貫いて、真っ黒に焦げた黒蛇の体は粉々になり吹き飛んだ。 龍神に残されたのは、魂を失った片割れの抜け殻だけ。 龍神は手の中の娘に頬擦りし、大粒の涙を溢した。 妖狐も鬼も孝太も痛ましそうに龍神を見た。 二度と龍の珠は命を繋がない。 それでも龍神は奇跡を信じて龍珠を娘の胸元に置いた。 「俺の尾を分けてやる。必ず助ける!」 「もちろん鬼の角もやろう。神力と妖力を合わせればまだ間に合うかもしれない!」 「俺だってゆうのためならなんだってする!」 皆が龍珠に手を翳す。 奇跡が起こることを信じて……
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