ベースメント 3

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ベースメント 3

 音をたてて、血の気が引く。  真夏と美鈴はそこで口早になり、交互に私を責め立てた。 「お前が入社したのは、1989年。バブルが崩壊する直前だった。悪運強いよ、まったく。後2年遅かったら、就職氷河期だったのにさ」 「必死の想いでOB訪問に来る後輩の女子学生に目をつけたあなたは、昼間は忙しいからという口実で夜呼び出して、お酒を飲ませてはレイプしていたのよね。採用を餌にして」 「その内お前は、ただレイプするだけじゃなく、自分の出世に使うことを思いついた。つまり、レイプした後、上司への貢ぎ物にするっていう卑劣なやり方だ。ほんと、へどが出る」 「順調に出世していったけど、年を取るとOB訪問に来る学生がいなくなる。それはそうよね、年の近い若い先輩じゃないと参考にならないもの」 「そこで今度は部下に女子学生を紹介させることにした。今度は出世を餌にして」 「部下が採用を餌に女子学生を釣り、あなたが出世を餌に取り上げる訳ね」 「さっき下剤入りのコーヒーをお前に呑ませた彼女も、そういう犠牲にあった一人なんだよ。お前は何人も抱いて忘れちまってるかも知れないが、()られた方の傷は癒えないんだ」 「し、しかし……」  私は糾弾に耐えかねて口走った。 「そ、その子も結局、ウチに就職できた訳だろう。や、約束はちゃんと、守っ……」 「ふざけんなっ!」  真夏が勢いよく振り上げた手で、私の頬を思いっきりはたいた。  女のくせに、何という力!  痛みで頬が痺れ、私は口が利けなくなった。 「お前は何もしなかっただろうっ! ただ姦りっぱなしで!」 「そうよ、彼女は実力で入ったの。あなたの口利きなんて、別になかったのに」  美鈴も、握りしめた拳で私の横っ面を張った。  これもまた、何という力……  椅子に縛りつけられていなかったら、私は壁に吹っ飛ばされていただろう。 「けど、入社なんかしない方がよかったのかも知れない。運命のいたずらで、人事部に配属されて、なんとお前の部下になっちまった。毎日のようにお前と顔を合わせて、つらかった夜のことを思い出させられるんだ。地獄だよ」 「しかも、あなたの方はレイプしたことなんてすっかり忘れている。それどころか彼女のことさえ覚えていない。何しろOB訪問に来る女子学生がふんだんにいるんですもの。とっかえひっかえ抱いていれば、もう一人一人覚えてなんかいられないでしょう」 「まさにリクルート・ハーレムだよ。お前はそこの」  真夏が私の、恐怖で縮こまったモノをスニーカーのつま先で軽く蹴った。 「裸の王様だ」
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