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音をたてて、血の気が引く。
真夏と美鈴はそこで口早になり、交互に私を責め立てた。
「お前が入社したのは、1989年。バブルが崩壊する直前だった。悪運強いよ、まったく。後2年遅かったら、就職氷河期だったのにさ」
「必死の想いでOB訪問に来る後輩の女子学生に目をつけたあなたは、昼間は忙しいからという口実で夜呼び出して、お酒を飲ませてはレイプしていたのよね。採用を餌にして」
「その内お前は、ただレイプするだけじゃなく、自分の出世に使うことを思いついた。つまり、レイプした後、上司への貢ぎ物にするっていう卑劣なやり方だ。ほんと、へどが出る」
「順調に出世していったけど、年を取るとOB訪問に来る学生がいなくなる。それはそうよね、年の近い若い先輩じゃないと参考にならないもの」
「そこで今度は部下に女子学生を紹介させることにした。今度は出世を餌にして」
「部下が採用を餌に女子学生を釣り、あなたが出世を餌に取り上げる訳ね」
「さっき下剤入りのコーヒーをお前に呑ませた彼女も、そういう犠牲にあった一人なんだよ。お前は何人も抱いて忘れちまってるかも知れないが、姦られた方の傷は癒えないんだ」
「し、しかし……」
私は糾弾に耐えかねて口走った。
「そ、その子も結局、ウチに就職できた訳だろう。や、約束はちゃんと、守っ……」
「ふざけんなっ!」
真夏が勢いよく振り上げた手で、私の頬を思いっきりはたいた。
女のくせに、何という力!
痛みで頬が痺れ、私は口が利けなくなった。
「お前は何もしなかっただろうっ! ただ姦りっぱなしで!」
「そうよ、彼女は実力で入ったの。あなたの口利きなんて、別になかったのに」
美鈴も、握りしめた拳で私の横っ面を張った。
これもまた、何という力……
椅子に縛りつけられていなかったら、私は壁に吹っ飛ばされていただろう。
「けど、入社なんかしない方がよかったのかも知れない。運命のいたずらで、人事部に配属されて、なんとお前の部下になっちまった。毎日のようにお前と顔を合わせて、つらかった夜のことを思い出させられるんだ。地獄だよ」
「しかも、あなたの方はレイプしたことなんてすっかり忘れている。それどころか彼女のことさえ覚えていない。何しろOB訪問に来る女子学生がふんだんにいるんですもの。とっかえひっかえ抱いていれば、もう一人一人覚えてなんかいられないでしょう」
「まさにリクルート・ハーレムだよ。お前はそこの」
真夏が私の、恐怖で縮こまったモノをスニーカーのつま先で軽く蹴った。
「裸の王様だ」
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