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金髪、身長、云々は置いといて。
この傲慢じみた態度、根拠の無い自信たっぷりな物言い、そこはかなとなく感じる間抜け感。
ストレートに言ってしまえば、馬鹿っぽい。
そして、凡人だから理解出来ないのか、それともそっちがそれ以下なのか、理解出来ない趣味の悪さ―――いや、個性的ーーーー…。
(この人…斉藤、さんだ…)
楓のあの一言がまさかの決定打。
無意識に後退してしまう十時は、そろりと口を開いた。
「あの、もしかして、ですけど、齋藤先輩、ですかね…」
「え、何、お前俺の事知ってるのかよ」
やっぱり…
本当にこんなに分かり易い人間だったとは意外だが、それ以上に意外なのはご本人登場、しかも何故か自分の所に。
「いや、えー、もし、かして、俺結構一年の間でも有名だったりするのか?」
てれてれすんなや。
ほんのりと頬を染めて、ぼりぼりと頭を掻く斉藤に、愛想染みた笑顔を返すのが精一杯な十時はもうこの場をどう切り抜けようか、苛立ちながらも、それしか考えれない。
面倒臭い事に巻き込まれるのはもう目に見えている。
と、言うかこの男自体が面倒臭いと言うか、胡散臭い。
階段では目立つと少し離れた先の非常口近くに移動し、改めて対峙。
矢張り180センチ前後ある身長に胸板も中々の厚みがあり、鍛えられているのが分かる。
志木程では無いだろうが、逞しさが目立つその腕で殴られようものならば、痛いどころでは済まされない。
「…あの、さっきの話ですけど、俺、別に川添先輩の事はどうも思ってないので」
取り敢えず、当たり障りのない、出来るだけ刺激をさせない様に此処を抜けよう。
(本当…何で俺なんだよ…)
初期装備のまま中ボスに出会った気分だ。
しかし、
「で、十時。お前川添が邪魔だろう」
再び同じ質問に口角を上げたまま、十時の眉間に濃い皺が寄る。
話きいてんのかよ、と素で言いそうになったが、それを何とか抑え切った自分を褒めたい。
いくら不審そのものとは言え、三年生。
あまりに失礼な態度はこれまた後々面倒だと十時はもう一度ニコッと微笑むと首を振った。
目付きの悪さ故、この笑顔がどう見えて、どんな印象を与えるか不安な所ではあるが、知ったこっちゃない。
「あ、の、俺は全然川添先輩の事何とも思ってないんで邪魔とか、そんなもん無いです」
「俺も常々あいつにはムカついててな」
「まじか」
耳に人の話を聞かない呪いでも掛かっているのだろか。
全く持って十時の求める答えでは無いものしか返ってこない。
それどころか、
「お前の恋人が川添に狙われてるんだろう?えーっと、何だ、あ、河野とか言う一年」
「いや、先輩待って、色々間違ってます」
「そりゃ川添なんてお前からしたら迷惑以外の何者でも無いよなー」
いや、迷惑度で言うなら、今どちらかと言ったらあんたの方に勝敗があがってんだけど。
(いっそ言ってやろうか)
溜め息混じりにそんな不穏な感情が黒々と支配しそうになるも、ぐっと腕の中にある小包みを握りしめると、十時は腹から絞り出す様に息を吐いた。
「…あの、斉藤先輩」
「それでだなぁ!俺に良い案があるんだが、」
「斉藤さん」
「…あぁ?」
ようやっと此方の声が届いたらしいが、話を遮られたからか、返事の声は低い。
けれど、此処で怯んだ所で前には進めない。
いくら人目に付きにくい場所とは言え、不特定多数の人間に見られる事だってあるかもしれないのだ。
色々と憶測が立てられるかもしれない。
その中でファッションセンスが一緒なんじゃ、なんて噂が無いとは言い切れない。
それだけは嫌だ。
「斉藤さん、もしかして、の話だけど俺を使って川添先輩に一矢報おうなんて思ってます?」
「……そうだっつったら?」
どうやら耳の呪いは空気を読んで消えてくれたらしい。
ちゃんとレスポンスがあった事にほっと安堵した十時は斉藤の顔を真っ直ぐに見据える。
「すみません。まず訂正からします。俺と河野は付き合ってないです。よって川添先輩が邪魔だと言う認識は無いです。面倒くせーなぁ、とはたまに思うくらいなもんで」
「…川添はその河野と付き合ってるのか?」
「いや、気に入ってはいるようです。ただ河野にその気が無いんで実質片想いってやつですね」
へぇ…っと斉藤が笑った、
気がする。
(あー…まじで面倒だわ〜)
ただ、素直だな、と十時は思う。
「あの、だからって河野に手は出さんで下さいね」
「はぁ?お前にそんな事言われたくねーんだけど。話を聞く限りではお前ただの部外者じゃねーか」
その部外者に話を振ってきたのはどこのファッションリーダーだよ、と突っ込みたい。
溜め息と共に十時は抱えていた荷物のガムテープを一気に剥がした。
いきなり目の前でビリビリと持っていた荷物を開封し始めた十時に、斉藤の眼が見開かれ、何をしてんだと言わんばかりに眉根を寄せているが、
「チーズケーキ、好きですか?」
その問いに出てきたのは、『は?』と言う間の抜けた声。
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