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 時間的猶予(ゆうよ)は十五分、そうと決まれば、あとは人海戦術でAの確保に邁進(まいしん)するのみだ。警察と救急車が到着するまでにAを捕らえて監禁し、ノイローゼで暴れたBが社内で破壊の限りを尽くしてのち、窓から飛び降りたと社員全員が口裏を合わせ証言すれば全てが丸く収まるのだ。Bが会社の六階窓を突き破り盛大に落下したといっても、まだ早朝で目撃者もおるまい、さっさとAを片付ければ全て解決だ。    先ほどまでとは打って変わり、刺股を手にした数人の社員たちがAを追い詰めてゆく。Aの奇声も狂気から恐怖の叫びへと変化していた。Aが頼りの黄金バットをどれ程振り回しても無駄である。非常訓練で培った職人オリンピック級刺股の個人()と、チームリーダーの(もと)、統率のとれた刺股部隊の連係プレイによって、形勢は完全に逆転しAは追い立てられてゆくしかないのだ。
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