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Ⅳ
それからも、我々は何事もなかったかのようにAを無視して労働に勤しんでいる。労働に汗を流す我々の姿を、時々仮眠室の隙間から覗いているAの気配を感じる。終業後や休日にオフィスを徘徊している形跡もあるが、天岩戸よろしくウズメ役の我が社きっての美人女性社員Iが素っ裸で踊っても出て来ないのだから放置するしかあるまい。
Iも最初こそ、「えー! あたしがですか?」などと年甲斐もなくカマトトぶってはいたが、流石はエリート社畜である、いざ脱ぐとプロ顔負けのノリノリのストリップで我等社畜たちを魅了してしまった。
「ちょっとだけよぉ~」
なんて、いつの時代の人間だ。どこかでアルバイトでもしていたのではないかとDに履歴書を確認させて驚いた。美魔女とは本当に魔女なのかもしれない。
それでもAは反応しない。現状でも特段問題はないのだから、我々はAを徹底的に無視することにした。Aも、社外に出て真実を話せば殺人犯になるのだから出てくることもあるまい。
それからは時折、仮眠室の少し開かれた隙間からAのメモが床に落とされるようになった。必要な物や欲しい物が書いてある。Aも仮眠室のミニマルな生活が気に入ったらしく、差し入れられる三食の食事をたいらげる以外は、雑誌や書籍を差し入れるだけで済んでいたので、Aの世話はDと手の空いた者の持ち回りですることになった。
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