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忙しい社畜の習慣が身に染みている俺は、暫くするとAの存在さえ忘れていた。そんな平穏なる社畜労働の日々を取り戻したある日、突然労働基準監督署の監査が入るという情報が上司からもたらされた。Aは相変わらず仮眠室に立て篭もっている。
Dに確認すると、ここ暫くAからのメモもなく、食事にもあまり手を付けていないという。病気か? しかし、Aは相変わらず内鍵を掛けている。仮眠室の戸に耳をそばだてると、何やらぶつぶつと独り言を呟き続けているようだ、戸をノックしても返事さえないのも相変わらずだ。
「これは不味いことになったな」
「何か異変でも?」
戸に耳を当てている俺を真似てDも耳を当てた。
「元気そうじゃないですか」
「狂ったんじゃないのか?」
「それは元からでしょう」
そう言えばそうだった。Dが言うには、最近Aは差し入れた書籍の影響で宗教に凝っているらしく、肉類を食べず、ぶつぶつと一日中何か呟いているようである。これでは社畜として使いものにならないかもしれない。
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