第1話 社内エリートの奇妙な生態

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 人事部(うち)には更に気持ち悪い傾向がある。社内結婚が異常に多い。それならうちもそうだ、という方も多いだろうが、人事部の場合はそれが部内結婚なのだ。  当然未婚の男女の数が限られてくるから、重複した関係も生まれる。何が気持ち悪いと言っても、披露宴会場にひな壇の二人と関係あった男女が、何人も一堂に集う風景に勝るものはない。  それでも、涼しい顔をして祝辞を述べてる姿には、そのふてぶてしさに逆に感心することもある。最悪なのは途中で泣き崩れて止まらない()が出て来たときだ。そのあまりの醜悪さにはすぐにも帰りたくなる。  私は長年の考察の末、これを芸能界現象と勝手に名付けている。共通点は閉鎖された社会での恋愛劇といったところだ。  私もここに配属されて二年間は、散々口説かれたものだが、あまりに隙を作らなかったせいで、今は誰にも口説かれない。年が進むと、年下の可愛い性格の女性がたくさん入って来るから、私のような女の需要が、無くなるのは頷ける。  私だって大学生の頃はそれなりに場数を踏んだし、躰の関係も両手では足りない人数と重ねたものだ。それがこんなに固くなったのは、とにかく働いて金を稼がなければならないせいだ。  私の家はそれほど裕福ではないのに、両親が子供好きで下に妹が三人もいる。  作りすぎだろうと思ったときもあったが、長年一緒に暮らすと情が出てくる。だから可愛い妹たちのために、全員学校を卒業するまでは、長女として家に金を入れようと決意した。  そうは思ってもストレスは溜まる。あまりにチャラチャラした後輩を見ると、つい余計なちょっかいを出したくなる。  たいていは、そんなことに労力をかけるのが馬鹿らしくなって、思いとどまるのだが…  まったくあの日はやりすぎてしまった。後悔しても後の祭りだ。あれから夜になると、ときどき悪夢にうなされる。
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