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聞かされる方もげんなり肩を落としため息をつくしかない。
スカウト作戦失敗――べったりとテーブルに突っ伏して京介が唸った。
「座敷童って、嫌われるものか?」
「知らん。座敷童にでもなってみるか?」
素っ気ない啓一郎。本気で言っているかもしれない。
「今さら子供に戻れん」
そもそも啓一郎は冗談を言う男ではない。
(――疲れた。もう布団に入って寝たい)
簡単に見つかると思ったのに、想定外に難航している。
ついと逸らせた視界の隅に小さな女の子。
と言っても問題の座敷童ではない。
可愛らしい赤い小花柄のワンピース。怯えた目でこちらをうかがう栗色の目。ふわふわの髪の毛に白いリボンが揺れる。まだ幼く小学生になるかならないか。京介と目が合うと慌てて柱の陰に隠れた。
「なんだ、本物の子供がいるじゃないか」
細い柱に隠れ切れていない。気になるのか顔を半分のぞかせてこちらを伺っている。
いい加減に飽きた京介が手招きするが、啓一郎を見てあわてて視線を逸らす。
「啓ちゃんが怖いってさ」
「――脅した覚えはない」
それでも、もう一度顔を半分のぞかせて、啓一郎と目が合うと小さな肩をびくつかせる。
「顔が怖いんじゃないか?」
「今さらどうしろと?」
何か言いたげだが、これではいつまでたっても話ができない。
――人見知りか? いや。問題は。
「おいで。怖く見えるけど、愛想がないだけ。別に君をいじめるつもりはない」
京介がお得意の人懐っこい笑顔を向けて手招きする。それでもしばらく迷って――ようやくリスか子猫のようにおずおず近づいてくる。
先ほどの様子からも何か言いたいことがあると察するが……思い当たることはない。
「嬢ちゃん、お名前は?」
「ことね」と甲高い声。
視線はびくびくと啓一郎を警戒している。
別に怯えられる覚えのない啓一郎は面白くなさそうな顔をしている。
「お兄ちゃんたち、りんをいじめに来たの?」
「りん?」
京介が小首をかしげる。
「……あの、着物を着た子」
ぼそぼそと消え入りそうなほど小さな声。
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