出逢い

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出逢い

 劣等生と呼ばれる生き物は、優等生と呼ばれる生き物達とは違い、肩身の狭い生活をしている。身から出た錆と言われればそれまでだが、彼等も彼等なりに居場所を探している。  彼等は、目立ちたいわけでも、迷惑をかけたいわけでもない。ただ、誰かに認めて欲しいのだ。存在していることを。  秋本誠也(あきもとせいや)もその中の一人だった。今年高校受験を控えているというのに、髪を赤く染め上げ、耳にピアスを開けている。いわゆる『不良』と呼ばれている彼は、学校一の問題児。だから、教師達もお手上げだ。  彼はいつも決まった時間に屋上にいた。錆びれたフェンスに囲まれた屋上は、彼にとって唯一の居場所。それを知っている生徒達は、そこへは絶対に近付かない。  しかし、例外もいた。これまた、いつも決まった時間に現れる栗色の髪をした少女。彼女は、長くうねった髪を風で揺らし、フェンスの前に座っている。初夏の景色を見ているのかそうでないのか、彼女はただただボーッとするばかり。  誠也は、そんな彼女のことが気になっていた。  何せ、彼女は学校一の美人。名は、朝日桜(あさひさくら)。野獣と呼ばれている誠也にとって、彼女は光のような存在。好意を抱いても手に届かない。 だから、話しかけるきっかけもない。  しかし、その日は突如やってきた。  桜は、いつものようにフェンスに寄りかかり、何かを眺めていた。すると、突然フェンスが壊れ、桜の体が前に傾いていく。前々から、危ないと教師達は話していたが、直す気配がなかったそれは、一足先に大きな音を立てて地面の上へ落ちた。  四階建ての校舎。落ちればひとたまりもない。やばい、と桜が死を覚悟した瞬間、何者かが彼女の腕を掴んだ。 「死にてえのか?」  そう言って、桜の体を起こしたのは誠也だった。煙草の臭いを漂わせている彼は、眉を顰めて彼女を見ている。
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