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気付くと長い茶色い髪を2つに束ねた娘が立っていた。 部屋全体がキラキラと輝いて見えていた。 私は言葉を忘れていた。 「わたしね、ここに来る前からあなたの事知ってたんだ。 あなたがずっと優しくしてくれたあずさから聞いていたから。 覚えてるでしょ? あずさの事。 あの子は私の妹なの。 あの頃 私は人が苦手で訓練も嫌でしょうがなかった。 そんな時 大きくなって帰って来たあずさは幸せそうだった。 でもわたしは訓練をサボってばかりで合格しなくてもいいと思ってたの。 そんな時あずさがあなたの事を話をしてくれた。 私達の事が苦手で一生懸命好きになろうと努力する心の優しい人。 耳の後から胸まで優しく撫でてくれる人。 そしてレンゲの香りが漂う人。 その人のおかげで幸せで楽しい時を過ごしながら大きくなったって... あずさはそう言ってたけど私はそんな人がいるなんて思わなかった。 でも、それで私も頑張れて何とか訓練にも合格したの。 奇跡だった。 あなたがわたしに触れた瞬間 すぐに分かった。 耳の後から胸まで優しく撫でてくれるレンゲの香りが漂う人。 まさかあずさが話してた人と巡り会えるなんて。 あなたの指先から伝わる優しさや労りと安心感。 私は心地よくていつも側にいたかった。 でもごめんね。 もう少し長く一緒に居たかったけど... ...ねえ、外へ出ない?」 小春は私の手を取って外へ出た。 いつも通る歩道の凸凹を見ながら私と小春は歩いた。 初めて見る世界はぼんやりとしていて幾つかの色が貼り付いていた。 想像すら出来なかった世界を小春は私に教えてくれた。 気付くと小春が病院の玄関前の階段で座っていて私も隣りに座った。 「疲れちゃった。 ...もうお別れだね。 わたしとあずさからあなたへ、感謝の気持ち... 受取ってくれてありがとう。」 「まだだよ... まだ一緒にいようよ。 行かないで...」 私は小春を抱きしめると何もない世界の中で自分を抱きしめていた。 看護師が私の肩を揺すっていた。 「今ご自宅に連絡したんですけど、 ここにいらっしゃったなんて... ...小春ちゃん亡くなりました。」 「小春に連れられてここまで来たんです。 あの子は自分の世界を私に見せてくれたんです。」 私は自分の身体を抱きしめたまま小春の名を何度も呼び続けた。 おわり
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