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ある日 両親と盲導犬の訓練施設へ行った。 家から車で3時間ほど走ると草木の香りが豊かな 上り坂の途中にあった。 何人かの人達と一緒に施設スタッフから簡単な説明を受けた。 多くの犬がいる筈なのに静かだった。 希望すれば盲導犬と触れ合えるようで、折角ここまで来たのだから思い切ってお願いした。 部屋で待っていると犬の気配を感じ、扉が開くと犬の匂いが広がった。 私は一瞬 怯み(ひる)立ち上がろうとした。 すると、 「逃げなくても大丈夫です。 この子は凄く大人しいんですよ。」 スタッフが私の犬嫌いを知っててすぐに言葉を掛けてくれた。 そしてラブラドールと言う大型犬だと教えてくれた。 「ここでチョットだけ一緒に歩いてみますか?」 「・・・・・・」 私は迷った。 「歩いてみたら? 可愛いワンちゃんだよ。」 母が言った。 「...じゃあ、お願いしいます。」 私は立ち上がると犬が近づき私の横で止まった。 「これを持ってみて下さい。」 スタッフがハーネスだと教えてくれた。 私はハーネスを恐る恐る掴むと犬の視線を強く感じた。 この部屋がどうなっているのか分からず暫く動かずにいると、 「どうぞゆっくり歩いて見て下さい。」 スタッフに促されゆっくりと歩き出した。
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