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最初はいい返事を貰えなかったが見学だったらと言う事で自宅から割と近い所にあるパピーウォーカーのお宅を紹介された。 小学生2人と両親とおばあちゃんの5人家族だった。 ゴールデンレトリバーの生後3ヶ月の女の子であずさと呼ばれていた。 抱きかかえると思ったよりずっしりと重かったが大人しい子だった。 でも子供達と遊ぶ時は吠えたり唸ったりやんちゃな子犬だった。 母の時間が取れれば出来るだけあずさに会いに行った。 それから1年が過ぎようとしていた。 あずさは盲導犬になれるかどうか分からないけど訓練施設に帰りその家族とお別れした。 あずさとはかなり通じ合う事が出来た気がしたし、とにかく彼女のお陰で犬嫌いを克服出来たのは間違いなかった。 私にも新しい生活が始まろうとしていた。 貸与される盲導犬が決まりその子が家に来る事になり、私の生活範囲や交通機関等 これから一緒に行動を共にする訓練が始まる。 2歳のゴールデンレトリバーで小春と言う女の子だった。 私は彼女の顔、長く垂れた耳、背中、腰、前後の足、シッポ、全身を触れながら小春を感じた。 きっと小春にしてみればセクハラだと思ったかも知れない。 1ヶ月を過ぎた頃、私と小春だけでお出かけする事になった。 近くのスーパーマーケットまで行って買物をして帰って来るという、私と小春にしてみれば外国に行くような覚悟で玄関を出た。 練習した歩道や横断歩道は何とかクリアしてスーパーマーケットで買物を始めた。 何度も売り場の位置やルートを頭の中で整理して来たので思った以上にスムーズだったが途中 何人かの人に声を掛けられ助けて貰った。 でも、 「こんな所に犬がいる。」 「不潔なんじゃない?」 そんな言葉が聞こえた時はかなり落ち込んだ。 それから私と小春の本格的な共同生活が始まった。
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