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「お前さん……確か楚大人のところにいた……」
曹にとっては見知った顔である。かつて美紅が襲われた事件の際、救出に関わった紫月も男の顔には見覚えがあった。
「貴様……よくも! 奥方を放せ!」
曹がすかさず対峙を買って出たが、
「待って曹さん! 違うの。この方は私を助けてくださったのよ!」
当の美紅に言われて、一同は大きく瞳を見開かされてしまった。男の方も既に曹らが拘束されていた縄を解いていることに驚いた様子だったが、風の側近で精鋭と言われる曹らのことだ、それも当然かと思ったようだ。男は洗いざらい非を認め、ここに至った経緯を詳しく話してよこした。
「……というわけなんだ。俺はこの通りどうしようもねえクズですが、姐様のお心意気に感銘を受けました。これよりは心を入れ替え、俺にできることはなんでもする心づもりです!」
到底信じてはもらえないだろうと男は言ったが、美紅の口添えもあって、ひとまずは彼を信じることになった。
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