チェインジング・ダーリン

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「ただいまダーリン! なんつってー!」  紫月はおどけながらもチュッと亭主の額に口付けを落とすサービスぶりで、冰の方は仔犬のように丸まっては大きな腕の中にすっぽりと収まっている。さっきまでのことが夢幻のようにいつもの光景が戻ってきた瞬間だった。 「まあお熱いこと! 眼福だわね!」  里恵子に囃し立てられてドッと場が湧き、小春日和の陽射しが穏やかな日常を祝福するかのようにやわらかに降り注いだのだった。 「ん! こいつぁ我が嫁たちを労う為にもゆっくりバカンスでも考えにゃいかんな」  鐘崎がそんなことを口走れば、周もその通りだとうなずき、紫月も冰も途端に目を輝かせた。 「うっは! やったな冰君!」 「はい! 楽しみです!」 「よし! それじゃ今年の年末年始は長めのバカンスといくか」 「そうだな。例年通り国内でもいいが、いっそ海外で羽を伸ばすのも悪くねえ。仕事との兼ね合いでどっちか寛げる方にするか。その前にクリスマスパーティーもせにゃいかん。紫月、今年はどんなケーキがいい?」  下手をすれば九死に一生というくらいの事件に遭った直後というのに、まるで真逆のクリスマスケーキの話を楽しそうにする鐘崎には苦笑させられるところだが、さすが極道の世界で育っただけあってか肝が座っているとでもいおうか。それに対して同じテンションで即乗ってみせる伴侶たちもまた頼もしい姐なのである。それを証拠に紫月も冰も頭の中はすっかりクリスマスモードのようだ。
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