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年の瀬
年の瀬を迎え、新年まで残すところ数日となった。
周の社も年末年始の連休に入り、冰は愛する男と共にのんびりとした朝のブランチを楽しんでいた。すると、そこへ食後の茶を淹れに来た真田がにこやかに話し掛けてきた。
「今日は午後から新年の飾り付けを行うんですよ。冰さんは日本のお正月は初めてでございますな」
これまでは『雪吹様』と少々畏まった呼び方をしていた真田だが、冰自身の希望もあって、ここ最近では『冰さん』になっている。すっかり周家の人々とも馴染んで、こうした日々の何気ない一瞬一瞬に穏やかな幸せを感じていた。
「お正月にはお餅を飾るんですよね? あの丸い雪だるまみたいな形のでしたっけ?」
「はは、そうですそうです! 鏡餅でございますな。お餅の上に橙を乗せたり、四方紅を飾ったりしますので雅でございますよ。社屋の玄関には門松なども設置致しますし、日本での初めてのお正月を楽しんでくださればと思います」
「うわぁ、門松ですか! テレビや雑誌で見たことはあるけど、実物を見るのは初めてです!」
冰が瞳を輝かせる傍らで、周が茶をすすりながら言った。
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