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「門松や橙なんかの飾りは毎年カネのヤツが調達してくれるんでな。午後からあいつらもここに来るから、俺らも一緒に飾り付けをするか」
いつもなら真田ら家令に任せきりなのだが、今年は冰にも珍しいものを見せてやれるしと、周も乗り気のようだ。
「わぁ、楽しみだなぁ。俺が小さい頃、両親が部屋にその鏡餅っていうのを飾ってたのをうっすら覚えてるんだ。可愛いから手に取って遊んでたらお母さんに叱られちゃってね。それだけははっきり覚えてる」
冰は恥ずかしそうに苦笑している。
「――なるほど、それで雪だるまか」
幼かった冰には鏡餅の形が雪だるまに見えたのだろうと想像すると、いかにも子供の考えそうなことだと思う。小さな手で一生懸命に触ろうとしている姿が目に浮かぶわけか、周の口元は自然とゆるむのだった。
「じゃあ今年はお前も一緒に飾り付けをすりゃいい」
「いいの?」
やったー! という勢いでパッと目を輝かせる様子も、周にとっては堪らなく可愛いと思えるのだった。
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