年の瀬

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 午後になると鐘崎が紫月と共に正月飾り一式を持ってやって来た。今日は二人きりではなく、他に三人ほどの男たちも一緒だ。  一人は真田と同じ年くらいの初老の男で、名を藤堂源次郎といった。彼もまた、真田同様で、鐘崎家の一切を取り仕切っている家令らしい。他の二人は鐘崎らと同い年くらいだろうか、若くて体格も立派な、見るからに頼もしそうな男たちである。源次郎の指示で門松などの大きなものを手際よく運び入れてくれる。彼らは鐘崎の組の若い衆とのことだった。 「さて、社の方は済んだな。冰、お待ちかねの”雪だるま”を飾りに行くぞ」 「うん!」  子供の頃に見た可愛い雪だるまを想像していた冰は、ダイニングに飾る鏡餅を見た瞬間、想像していたものより遥かに大きく立派なのに驚かされてしまった。 「うわ……! 大きい……」  餅は一つでもずっしりと重く、危なっかしい手つきながらも、周に手伝ってもらってようやくと持ち上げられるくらいだった。 「ほら、気の済むまで触っていいぞ」  ニヤりとしながら周に言われて、思わず頬が染まる。
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