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「香港で餡子といったら月餅が有名だよな? 冰君は食べたことあるだろ?」
鐘崎と共に何度か香港を訪れている紫月は、ご当地で食べた月餅が印象に残っているようだ。
「はい、月餅はじいちゃんが好きだったんで、俺もよく食べてました」
「そっかー! 俺、あれ好きなんだよな。それこそ真っ黒い艶のある餡子にクルミが入っててさ。濃厚な味が堪らなく美味いんだよ」
そこへ茶を持って真田がやって来た。
「今日は和菓子に合わせてお抹茶に致しましたよ」
冰にとってはこれまた珍しい大きな茶碗に緑色が鮮やかな薄茶がふるまわれて、またひとたび話に花が咲く。
そんな一同とは少し離れた席で、周と鐘崎にはコーヒーがもてなされていた。紫月らとは違って、甘いものは殆ど口にしない鐘崎の嗜好を心得ている真田の気遣いである。
「ところで、正月の予定はどうなんだ」
ワイワイと楽しそうな紫月らの席を横目にしながら鐘崎が問う。
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