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「お父上の楚大人はこのことをご存知ないのか」
「十中八九知らねえだろうな。あの方は周直下を治めていた時も非常に温厚で、できたお人柄の御仁だった。ボスも信頼を置いていたし、実際娘の不祥事がなければ今もファミリーにとって心強い存在だっただろう」
そんな彼がまたしても娘の悪事を知ったとすれば間違いなく心を痛めるはずだ。
「ライ、楚大人の現在の住処は分からないのですか?」
鄧が訊く。
「香港に問い合わせれば容易に割れるだろうがな。それより今は奥方の無事を確かめる方が先だ。スマートフォンなどの連絡手段が取り上げられているということは、周風たちにもこの状況を知らせられん」
既に深夜だ。今頃は風たちもとっくに接待の会食が済んで、こちらのことを捜しているだろう。
「ここが何処かも分かりませんしね。見張りの男たちの話から察するに、街外れであることは間違いないでしょうが」
四人は大急ぎで美紅の行方を捜すことにした。ちょうどその時だった。美紅を連れたアジア人の男が現れて、一同は咄嗟に身構えた。
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