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「経緯は分かった。それで、ここはいったい何処なんだ」
曹が訊いたが、男の方も土地勘はまったくないらしく、優秦に連れられるままにここへやって来ただけのようだった。
「分かっているのは優秦の嬢さんがこの姐様を亡き者にしようとしているということだけです。おそらく今頃は嬢さんが周風老板に接触を試みている頃かと思われます」
確かに美紅たちが劇場から戻らないことを知った風たちは、今頃大騒ぎになっていることだろう。早速に捜索に乗り出しているに違いない。
「間もなく嬢さんの手配した輩がここを襲撃にやって来るはずです。皆さんが窮地に陥っているところへ嬢さんがやって来て、嬢さんの口利きでそいつらをとめたということにするっていう計画だと聞いています」
その中で手は尽くしたが美紅だけは助けられなかったとするのが優秦の企みのようだ。
「姐様以外の方々を助ければ風老板もある程度納得されて、嬢さんに恩ができるだろうと思っているようで……。まあ俺は元々この姐様を殺すつもりはなく、二人で密かに逃げちまおうなんて考えていたわけですが……」
それも今は間違っていたと深く反省し、皆を無事に風らの元へ帰す為にできることは何でもすると男は言った。
「なるほど……。優秦の考えそうなことだ。仮に上手く事が運んだとしても、周風の心が優秦に向くわけもあるまいに!」
曹は舌打ったが、とにかくは一刻も早くここから脱出すべきだろう。
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