例えば、こんな最悪の日

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なかなか確信をつけず、遠回りな説明を受けた。20分近くかけてたどり着いた説明はこうだ。 圭太は知り合いから5周年を迎えるにゃんにゃんパーティーに出てもらえないかと依頼を受けた。その知り合いがこのパーティーの主催者らしい。でも去年のイベントで誰もいないところでお皿が落ちて割れたり、猫用のご飯がなくなったり、終いには参加者が変な声を聞いたと言い出したりしたため、霊のせいではないかと思っていると相談を受けたそうだ。 「なるほど。でも、何で私なんですか?圭太くん一人でも充分でしょう?」 圭太が優れた霊能者であることを一色はとっくに認識していたし、話を聞いた限りそんなに複雑な依頼にも思えない。 「それがねぇ、同伴者がいないとダメなんだよー。やっぱり連れてくなら悠ちゃんかなと思って」 「あんまり乗り気ではないんですけど」 飲み終わった2人分のティーカップを流しに運んでスポンジに泡を付ける。 その一色の背中越しに圭太の明るい声が届く。 「でも立食パーティーのご飯、三つ星レストランが用意してくれるんだよー?美味しいよねぇ、きっと」 一色の手がぴたり、と止まる。 「デザートもあるって言ってたなぁ。去年はベルティオンのケーキだったんだって。あれは手に入らないことで有名なのにねぇ、すごいよねぇ」 振り返りはしないが一色の耳は完全に圭太の方へ向いている。そんな一色を横目に見て圭太は分かりやすいなぁと口を緩めた。 「そう、お土産も貰えるんだって。こっそり聞いたらねぇ、今年はロンネフェルトの最高級茶葉だって。あー、でも悠ちゃんが行ってくれないなら僕も行けないなぁー。残念だなぁー?」 カチャン 一色が洗い終えた食器を水切りラックに移す音がする。 タオルで手を軽く拭きながら振り返った一色は 「まぁ、仕事ですしね。仕方ない、付き合いますよ」 そうぶっきらぼうに答えた。 そんなチョロい一色を見て口元を押さえて圭太は必死に笑いを堪えた。
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