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ゴロゴロと一色が嬉しそうに喉を鳴らす。そんな様子を見て橘は可笑しそうに笑った。
ホテルの一室、キングサイズのベッドに寝転がった橘にぴったりとしがみついた一色の柔らかい髪をさらりと撫ぜる。平素であればこのプライドの高い人間はこんな戯れを許したりしない。なのに今は嬉しくて仕方がないように目を細めされるがまま。そのギャップが面白くもあり、不愉快でもあった。
斎藤に猫の視界から見えなくなるように結界を張り、橘自身を飼い主だと思わせるように軽く暗示をかけた。意識を既に乗っ取られている一色に暗示をかけるのは容易く、一色と混じり合っている猫も簡単に斎藤から橘へ愛情の矛先を変えた。
一色の耳元に指を這わす。ぴくり、と肩が揺れた。
少し目を細めて息を吐くように笑うとそのまま細い首筋を伝って背中の方へ掌を回す。
にゃあ、と小さく一色が鳴く。
「存分に甘えていろ」
橘はそう囁くと首筋にかぷりと噛み付いた。
意識が浮上する。
なんだか懐かしくて、嬉しくて、幸せな気持ちだった。
「んっ……!」
一色は擽ったさに身をよじる。パッと目を開けると自分を見下ろすオールバックの男とバチっと目が合い、にやり、と笑われた。
これは、なんだかいけない状況な気がする。
胸元がスースーすると思えば上半身は裸で、ズボンはボタンが外されていて、これは認めたくないが何故か少し膨らんでいる。
「お目覚めか」
「……おはようございます。あの、この状況は…っ」
「自分で思い出せ」
「あっ、ちょっ、待って」
橘はそう言って片手で一色の両手首を頭の上に固定して、耳朶を食む。ぬるりと耳の裏を舐められてぞくっと背中を悪寒とも快感ともつかないものが駆けた。
考えろ。まだいまいち働かない頭で必死に今日あったことを思い返す。
そう、自分は確か圭太に連れられてにゃんにやんパーティに参加していて、そこで皿が割れて、猫たちを避難させようとしてたら、圭太が叫んで
「っどこ、舐めて!…んっ」
胸の突起を押しつぶすように舌で舐められ思わず腰が浮く。ここを橘に刺激されるのは出会った日以来だった。あの時は男性経験のある生き霊と混じってしまっていたから感じてしまっただけかと思っていたが、優しく舌先で転がすように舐められて、小さな先端に歯を立てられると、じんっと甘い疼きが残る。
「さっきまではにゃあにゃあ尻尾振って喜んでただろう」
「あ、んっ、にゃあにゃあなんて言って……」
言っていた、気がする。
ぼんやりとあった意識を手繰り寄せる。
橘にここに連れて来られて、身体中優しく撫ぜられて嬉しくて、いや、嬉しくはないのに、そう思ってしまっていた。
橘の指や唇が身体に触れるたびに、少しずつ意識がはっきりとしてきて、
「じょ、んっ、除霊、できたのならもうこんな事はしなくていいのでは」
「あ?最後まで甘やかせてやろうっていう優しさだろうが」
「っ、あ、私は、そんなっ、こと頼んでません」
甘えたがりの猫を満足させ、少しずつ祓っていったのだろう。あの猫が最後まで幸せに消えることが出来たのは確かだ。
でも、この人がこの方法を選んだのは猫のためではなく、自分への嫌がらせに決まっている。
「こんなにしておいて良く言えるな」
「ああっ、んんっ!!」
ぐちっ、とすっかり勃ち上がったものを掴まれて一色は一段と上ずった声をあげた。こんなに甘えた声を出したくはないのに、ぐちぐちと手を動かされればそんな余裕もなくなってしまう。
「あっ、あっ、んんっ、橘さん、」
「あ?なに?気持ちいい?」
「…っ、良く、ないっ」
「はっ、強情」
「あんっ、!」
ぐちり、と敏感な先端を弄られて背中が弓なりにそる。その隙間から片手を入れてぐいっと強引に引き起こされ、橘の膝の上に乗せられる。体制を整えようと咄嗟に両手を自分の後ろについたせいで橘の股間辺りに自分のものがぴたりとついた。
「っ!なに、して!」
「挿れねぇんだからこのくらい当然だろうが」
橘が自身のものと一色のものを一緒に掴む。自分以外のものがどくりと波打つ感覚に一色は無意識にツバを飲んだ。とにかく、熱い。自分の熱と橘の熱が混じり合う。
「っ、あ、んんっ…あっ…」
ぐちぐちぐち。
橘が手を動かす度に互いのものが擦れあって卑猥な音を立てる。
強い快感に一色はすぐ前にある橘の首に思わず腕を回した。一瞬驚いたようなに目を僅かに開いた橘は小さく息を吐くように笑って、白い首筋に舌を沿わせた。
「あっ、それ、やめっ!」
「なんで」
「なんでって、ああっ、ん、んっ…」
そのまま下から上へと舐め上げれば一色はきつく目を閉じて震え、ぎゅう、と橘にしがみついた。
「お前なぁ……」
「あっ、あっ、なに、あっ、ん、イクっ…から離してくださっ、あっ!!」
耳元で呆れたような声が聞こえた。その吐息にすらびくっと反応してしまう。
橘の手の動きは一層早く強くなる。どくどくどく、ともうはち切れるように熱くなったそこは限界が近い。
「あっ、あっ、……っんん!!!」
「っ、!」
一色は橘の手のひらに白濁を出して、くたりとそのままもたれ掛かった。
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